テレビのデジタル化(15.6.23)
まえがき
昨年だったか、NHKや民放のBSデジタル放送が開始され、
番組宣伝が騒がれたが、最近はあまり聞かなくなった。
NHKではBSを2チャンネル放送していて、これは一般化しているようだ。
CSというのもあって、スカパーやwowwowが放送されている。
テレビの放送形態が様々に言われている中、
今年になって、実家の親父から「テレビの調整をするから希望日を知らせろ、
という案内がきたけど、これは何だ?」ときかれた。
以前から言われていたデジタル放送の関係だろうと思って、
検索してみたらアナアナ変換のことらしい、とわかった。
そこで初めて、国レベルでデジタル放送開始の計画が進行していることを知った。
そして今月になり、定期的にポストに入ってくる地域の情報誌の中に、
このデジタル放送に関する記事があり、その問題点が色々書かれてあった。
そこで、色々とまとめてみました。
始まり
そもそもの始まりは1997年の郵政省(現総務省)幹部の
「2000年までに、地上波デジタル放送を開始する」という発言だという。
1998年には懇談会が報告書を出し、その内容が盛り込まれた
電波法改正案が昨年国会で可決された、という。
その内容は、以下の通り。
「テレビ放送の仕方を、現在のアナログ放送からデジタル放送に切り替える。
一度に切り替えることはできないので、
まず、2003年末には、
現在のアナログ波を放送しながら、
同時に地上波デジタル放送を三大広域圏(関東、中部、近畿)で開始。
デジタル放送受信のできるテレビ関連機器の普及を待って、
順次アナログ放送を停止し、2011年には現在のアナログ放送を停止。
放送は全てデジタル放送にする。」
「デジタルとアナログの両方の放送をする場合、今の放送電波の過密状態では、
流す場所がない。混信が起こるので、現在放送している一部の電波を、
余裕のある場所に移動する。
この作業(アナアナ変換)は国の予算で行い、2003年から、
各家庭のテレビやアンテナの調整を開始する。」
というものらしい。
電波
電波の伝わり方として、波をイメージしてもらうとわかりやすい。
波は山と谷の繰り返し。
電波には長さによって名前があり、長波、中波、短波、超短波、極超短波・・・。
中波はラジオのAM放送。短波もラジオ放送で使われている。
超短波はFMラジオやテレビ。極超短波はテレビのUHF放送で使用している。
このほか、タクシー無線や市民バンドの無線、携帯電話や警察無線など、
目には見えないけれど、空気中にはあらゆる電波が飛び交っている。
1〜12チャンネルのVHFテレビ放送用の電波は、超短波。
地球には電離層というイオンの層が上空を取り巻いていて、
中波や短波は電離層と地上の間を反射して進むので到達距離が長い。
が、超短波から上では、直線方向に進む力が強いので、電離層を突き抜けてしまう。
したがって、直線で電波を受け取って、また直線で電波を送信するという、
中継設備が必要になる。
現在の一般のテレビ放送の電波は、
地域の中継所を介して、くまなく受信できるようになっている。
今はアナログ信号を飛ばしているこの電波に、デジタル放送の信号を乗せて飛ばす。
これが、今回のデジタル地上波計画。
ちなみに、現在のBSやCS放送は、放送局からの電波を空の上の衛星に向けている。
そこで電波を反射させて地上に送信しているので、
家庭のBSやCSアンテナは、衛星方向に向けていれば障害物なしに受信できる。
アナログ波とデジタル波
アナログ信号
声(空気の振動)をマイクに向ける。
マイクは空気の振動を電気の波(電気信号)に変える。
スピーカーは、この電気信号を受けて、電気信号を音(空気の振動)に変える。
元の状態に復元する。
この時、音の信号(音の高さ、大きさ、音色など)は、連続した波の信号。
これがアナログ信号(波)。
レコード、カセットテープ、昔の黒電話、テレビ、ラジオ、それらの音は全て、
アナログ信号を扱っている。
アナログ信号は、送る情報量が多い。現実に忠実であるが故に、
雑音も情報として送信する。
音について言えば、それが欠点でもあり、リアルさという点では利点でもある。
装置が簡単というのも利点。
欠点は劣化しやすい。信号が不安定、など。
デジタル信号
0と1の組み合わせ。スイッチがオンかオフかの信号。
音楽CDやMD、DVD、ISDN回線の家庭の電話機などが
このデジタル信号を扱っている。
携帯電話のデジタル機種、警察無線などもこのデジタル信号(波)を使っている。
利点は、
音が劣化しない。情報量が少なくてすむ。暗号化ができるなど。
例えば、送信側がデジタル信号の配列の決まりを作っておく。
受信側がその決まり通りに信号を受けないと、元の信号を復元できない。
つまり、音楽CDを聴く(再生)する時に、
CDメーカーが決めた方式でデジタル信号を読み取らないと、聴けない。
そして、無線や電話の内容は、盗聴ができない信号、ということになる。
欠点は、
音楽の場合は、臨場感にかける音になってしまう、など。
デジタル放送の利点
信号が単純化されたものなので、情報量が少ない。
そのために、送信できる情報量と、実際に送信する情報量との差が生じる。
その空いた部分に、
テレビ放送予定表など、放送に付随した情報を送ることができる。
また、
受信している家庭側からの信号を、電話回線、インターネット回線などを使ってテレビ局側で受信して、
テレビ局と家庭で双方向のやりとりが出きる。
例えば、クイズの三択の回答、アンケートの回答、買い物など、
家庭からの情報をテレビ局側に送ることができる。
テレビの基本
放送局からは電波が発信されていて、
それをアンテナで受信して、テレビ放送を見ている。
アンテナで受けた放送信号が、テレビ放送として画面で見えるためには、
どういう経路が必要か。
アンテナで受けた電波から、放送信号を取り出して、
映像信号と音声信号に分ける。これがチューナー。
チューナーで分けられた信号の内、
映像信号を画面(ブラウン管、或いは液晶の画面)に送り、
音声信号をアンプ(増幅器)を通して大きくして、スピーカーに送る。
こうしてテレビ放送が見られる。
現在、放送局から送られている信号はアナログ信号。
一般家庭で使っているテレビは、アナログ信号の放送用のテレビ。
アナログ放送がデジタル放送に変わるとどうなるか。
アナログテレビで、デジタル放送を見ることは・・・できない。
ここが問題である。
今のテレビ放送は2011年には停止する。
その時には、デジタル放送用のアンテナやテレビやチューナーが家庭にないと、
テレビ放送は見られないのである。
この現実を、国民はあまり知らないらしい。
8年後には、今のテレビやビデオはただの箱になる、というのに、
国民の殆どが知らないというのが、今の「地上波デジタル計画」。
アナアナ変換
2003年末には、
三大広域圏でアナログ・デジタルの両方のテレビ放送を開始する。
そのため、現在の放送電波の位置を変えるので、
テレビの調整が必要である。これがアナアナ変換。
そのための費用を国の予算でやる、というのだが、
当初の予算では全国で 700億円かかる、といわれていた。
が、実際に計算してみると、その2倍超の 1800億円かかる、と判明。
何故そうなったのか、というと、電波をくまなく配信するために、
テレビを調整する家庭の数を少なく見込んだから。
首都圏に隣接する地域では、そこからの電波を受けている。
つまり、首都圏がデジタル化して順次アナログ波を停止すると、
その隣接する地域ではアナログ波しか見られないので、
2011年より前にテレビ放送が見られなくなる。
これでは困るのでアナアナ変換の必要な家庭に、
そうした地域を入れて計算し直したら、倍以上の数になった、という。
デジタル放送の問題点
デジタル放送計画の問題点は色々言われている。
yahooの検索で 「テレビ アナログ波 デジタル波」で検索してみると、
180数件の記事が見つかる。多くはこの計画の問題点を取り上げている。
1.アナアナ変換の費用
前述のアナアナ変換の増額した費用をどこから出すか、というのが解決されていない。
テレビやラジオ放送業界、携帯電話業界など、
電波を利用している業界の負担(電波使用料金)を増額しようとしたら、
業界の反発にあって断念した、という。
2.国民の負担
現在のテレビでは見られなくなる。
ということは、「アンテナやテレビ関連機器を買え」と言っているのである。
国民がそれを望んだのか?というとそうではない。
旧郵政省幹部が発言したからそうなっただけ。
実際にどれだけの負担になるのか、というと、
今現在の電気店では、
地上波デジタル放送用のアンテナ、テレビ、ビデオ、チューナーは売ってない。
ちなみに、現在放送されているBSデジタル用のアンテナやテレビでも、
地上波デジタル放送は見られない。
これから全て買うとなると、何十万円の出費となる。
物によっては30万というテレビも登場する。それは個人の好み。
では、今使えているテレビを使って見られないのか、というと、
デジタル放送をアナログ放送に変換する機械が10万円くらいで発売される、という。
もちろん、アンテナはデジタル用に買い換える必要がある。
この機械は、ただ見るための機械だから、アンケートに答えたりはできない。
今のままで見られる放送が、10万円+アンテナ代をださないと見られない。
これはおかしな話。
3.放送アンテナの問題
今のアナログ放送の中継所ではデジタル放送を中継できない個所が多いという。
扱う信号が違えば、設備を変更することになる、ということなのか、
詳しいことはわからない。新たに中継所を作ることが必要になる、という。
中継所からの電波を受信するには、障害物があってはだめである。
先にテレビの中継所が存在し、後から高層のビルを建てると、
周辺の電波妨害になることがある。
その場合にはビルの建主が電波障害に対処する義務が生じる。
しかし、今回の計画では、先にビルが立っている。
その後に中継所を立てることになる。
そうなると、ビルより高い位置に中継所を建てる必要がある。
その費用は莫大になる。
そしてまた、ビルの陰に位置する地域では電波が届かない。
それをどうカバーするか、が解決されていない、という。
また、各家庭のアンテナは当然デジタル放送用のものに変えることになる。
アンテナ線も変えるので、工事費は個人負担になる。
BSデジタル放送用のアンテナは、地上波デジタル放送には使えない。
4.アンテナ線の問題
現在のアンテナ線は、アナログ信号用のものだという。
集合住宅の場合、壁に埋め込まれたアンテナ線をデジタル用に変更しないと、
デジタル放送は見られない。
この工事費用を誰が負担するのか。
単純計算で考えると、集合住宅の各家庭で10万円の負担をすれば、
全国の集合住宅のアンテナ工事はできる、という。
つまり、マンション住まいの家庭では、
テレビと関連機器以外で10万円を負担しないと、
8年後からはテレビが見られないのである。
これは一戸建て住宅で、集合アンテナ形式で受信している家庭でも同じ。
この場合、利用家庭が設備変更の費用を負担することになる。
この費用はいくらになるかは不明。
いずれにしても、
全ての家庭が、デジタル放送を見られるためには、今のテレビを使った場合、
アナログ信号への変換機の10万+アンテナ工事費10万円=20万円
くらいの出費が必要だ、という。
5.思惑の背景と実際
旧郵政省幹部がなんでそうした発言をしたのか。
そこにはデジタル放送の先取り争いと、経済普及効果が関係しているという。
1.デジタル放送
当時、欧米先進国ではデジタル放送が魅力ある新技術といわれていた。
1998年にはアメリカで実施されるといわれ、
それに日本が遅れをとるわけにはいかなかった。
2000年までには日本もデジタル放送を開始しようと考えたらしい。
放送技術で先進国となれば、その後の市場の展開が有利になる、という話。
ところが、その後の経過をみると、欧米どちらもデジタル放送は破綻を迎えた、
或いは迎えそうだ、という状況だという。
2.経済波及効果
新しい技術に魅力があれば消費者はお金を出す。
そう考えての計画だったらしい。
消費者側から見れば、新たな出費に見合っただけの、魅力ある放送でなければ、
必要とされないものである。それは当然。
当時の情報社会と、今の情報社会。インターネットの普及率は全く違う。
通信技術の発達で、今では光通信で映像、音楽が見られるようになった。
大容量通信技術(ブロードバンド)の時代になり、パソコンでテレビがみられる。
放送としてのテレビはもう必要なくなったのである。
あらためてテレビにお金を使わなくても、情報のやり取りはインターネット経由でできる。
だから消費者の関心があまり向かない。その結果でデジタル放送は破綻を迎える。
これは日本でも同じことが言える。
それなのに、数年前の計画を実行しようと躍起になっているのが現実だ、という。
3.現場での問題
放送業界
法制化してまでの計画であるが、
しかし、放送業界にしてみると、実現には莫大な投資が必要だ、という。
例えば、キー局(首都圏の中心的な放送局)が、
今までのアナログ放送用の器材をデジタル用に整える。
その費用は、一地方局の年間予算に相当する、という。
その費用は制作費から捻出され、番組制作の質の低下を招いている。
では、地方局はどうするのか。その変更費用をどこから出すのか。
もう現実的な対策はない、という所もあるとかないとか。
放送業界にしてみれば、いずれはデジタル放送に変換されるのはわかるが、
そのための費用が見込めない内に義務的に話が進行するのは迷惑だ、という。
産業界
技術的な問題はないだろうけれど、規格の統一などは大丈夫なのか。
詳しいことはわからない。売れる商品ならば価格は低下するだろうけれど、
消費者が必要としていなければ売れない。高価なままでは余計に売れ残る。
実際の計画進行に問題が山積みな今、産業界ではどうなんだろう。
工事業界
国が費用を出してくれるので、請け負うメリットは大きい。
全国規模で、1800億円が動くのである。
しかし、今後の展開が不透明であり、
工事完了がいつまで、という限界も今後はわからない。
国民の理解が得られていない現在では、進行速度は余計に遅くなる。
結論
では消費者としてどうしたらいいのか。
今は静観がベストかもしれない。
チャンネル調整をしてくれる、というなら、してもらっても構わない。
それで個人負担がかかる、というなら断る。
今後、周りでデジタル放送の受信家庭が増えた頃に器材を揃えても遅くはない。
おわりに
net上では、一般人も政党関係の人も、
色んな人が色んなサイトでこの問題について発言しています。
不透明で非現実的な計画だ、というのは当たっているようですが、
私は政策関係には疎く、あんまり詳しくは知りません。
8年後には負担なしでテレビが見られるのを望むだけです。
(15.6.25)