作曲入門 (16.7.4)

ーオリジナル曲を作るー

 

はじめに

大きな楽器店に行くと、楽譜の本がおいてあります。

最近、たまたま暇つぶしに眺めていたら、

作曲マニュアルみたいな本が何冊もあるのをみつけました。

クラッシック、フォーク、ロックと、ジャンルは様々で、

中には「シンガーソングライター入門」みたいなタイトルのものもありました。

CD付きもあって、手取り足取りという解説本です。

時代は変わったものだ、と感じます。

 

私は楽譜の読み書きができなかったので、

学生の頃、ギターをコードで覚えてから自己流で作曲をしていました。

友達が書いた詩にメロディーをつけて、ギターで伴奏して歌ってテープに録音。

それを友達に聞かせて歌を覚えてもらい、コンサートでやったこともあります。

 

音符はわからなくても作曲はできます。

自分や他人の書いた詩を鼻歌で歌って、

それをラジカセやMDに録音すれば、それはオリジナル曲です。

ギターやピアノの伴奏をつければより本格的な音楽になります。

 

ここでは、私なりの曲作りの方法を解説します。

理論は何もありません。理屈ではなく、感覚でやってきたので、

本格的な説明はできません。

本来は音符を読み書き出来る方がいいにきまっていますから、

このやり方がいいのか悪いのかはわかりません。

 

1.とにかく録音

ラジカセ、MD、パソコン、何でもいいから、録音できる機械を用意する。

詩を用意する。

詩にメロディーをつけて、鼻歌で歌ってみる。

録音する。自分で聞いてみる。これでとにかくは曲が完成。

人が聞いてどうか、ということを気にしなければ、

既成の曲に似ていてもリズムがバラバラでも、何でもOK。

アカペラで歌う曲は全てオリジナル曲。

 

ギターやピアノが弾ける場合は、

伴奏やイントロ・間奏をつければ、音の流れがより豊かになります。

 

楽譜を読めない、書けない場合、メロディーを人に伝える手段は、

音として記録するしかありません。

今は、鼻歌で作曲ができるソフトが売っていますから、

それを使えば音と楽譜とができます。

また、フリー(無料)の作曲ソフトがあって、音符ではなく、

音の長さを回数で打ち込んでmidiファイルができるものもあります。

こちらを参照。(私は使い込んでいないので、操作方法は詳しくはわかりません)

 

2.詩の話

2−1)詩と曲

まず先に詩があって、詩を見ながら曲を作る。このやり方の方が簡単。

逆に曲を先に作って後から詩をつけることもできますが、これは難しい。

楽譜が書けない、読めない場合は、曲を先に作ることができない。

慣れるまでは、詩を見て曲をつける方法を繰り返します。

 

2−2)自由詩と曲(歌)用の詩

心に浮かぶままを文字にしたものが自由詩。

旋律を持つものが曲用の詩。

簡単にこの2つに分けてみると、

自由詩でも曲にはなりますが、言葉の区切りが難しくなる。

ラップでも言葉の数で区切るので、まったくの自由詩はあまり適さない。

曲を作る場合は、言葉の長さをある程度統一した曲用の詩を作ることになる。

 

2−3)詩の作り方

具象と抽象。現実と想像。

目で見える光景や心に浮かぶ風景。人とのやりとり、感想、印象。

テーマは日常から人生、闘い、愛、やさしさ、悲しさ。喜怒哀楽。

詩が何を言おうとしているのかは、作詩者の思いのまま。

早い話がセンス(感性)です。

 

一般に、楽しい歌より悲しい歌の方が作りやすい、と言います。

共感を呼びやすいのは楽しさより悲しさ。

悲しさを慰めるための歌は受け入れやすい、ということかもしれません。

逆に笑える歌を作るのは難しい。

これは、映画や芸能でも同じようです。人を笑わせるのは、泣かせるより難しい。

 

「さあ、作ろう」と意気込んでも、詩ができる訳ではありません。

ペンとメモ帳を持ち歩いて、色々な光景を眺めながら、言葉が浮かんだらメモ。

メモの羅列が集まって詩になる場合もある。

また、ある時突然、まとまった詩が浮かんでくる場合もあります。

 

浮かんでくる思いを、言葉としての詩に残す。

これを意識していることが必要みたいです。

 

ある程度ひとまとまりの詩ができたとします。

これを歌用の詩に修正します。

言葉の区切りや旋律によって、長さをある程度揃えます。

旋律は俳句(5 7 5)や短歌(5 7 5 7 7)のような音の数ではなく、

言葉の流れのリズム、という意味です。

 

私はあまり詩を書かないので、詩についてはこれくらいにします。

実際に、詩を書いている人に作るときのコツをきいて教えてもったり、

また、人の詩を見て旋律(リズム)や構成(進み方)などを読み取る、

ということも参考になります。

 

3.ギターを使っての曲作り

私は詩を見ながら、ギターで伴奏を適当に弾いて、

それに鼻歌を乗せて、大体の形を作ることが多いので、このやり方を説明します。

 

ある程度ギターを弾ける人を前提に話を進めますので、

ギターをこれから覚えたい人は、ギター入門を参照して基本をマスターしてからどうぞ。

 

3−1)ギターの伴奏

楽譜はわからなくてもギターは弾けます。

ギターはコードという弦の押さえ方のパターンを使います。

左手でギターのコードを押さえ、右手で弾き方のパターンを繰り返す。

コードには C D E F G A B という大きく分けて7種類があります。

7種類のそれぞれに、mや7や#や♭その他がつきます。

 

左手の話

曲には明るい曲、暗い曲があります。

それぞれ、メジャー(長調)な曲、マイナー(短調)な曲といいます。

まず、作りたい曲が明るいか、暗いかを選択します。

 

明るい

最初のコードがCかG

 

暗い

最初のコードがAmかEm

 

巡回コード

C Am Dm G7

これがCの巡回コードです。

これはパターンの基本で、Cから始まる曲で使うコードはAm Dm G7の他に、

F Em などがあります。

これだけを使って一曲が出来上がります。

 

明るい曲

C Am Dm G7 他に F Em

G Em Am D7 他に C Bm

 

暗い曲

Am Dm E7 他に F C G7

Em Am B7 他に C G D7

 

最初のコードが決まれば、後は使うコードが決まっている。

これは簡単です。コードの組み合わせで色々な曲になります。

 

※これは基本ですから、既成の曲の中には、

これ以外のコードを使っている場合が沢山あります。

G7ではなくGであったり、Cで始まった曲にA7やDが使われることもあります。

また、凝った曲では2番からキーが上がって全てのコードに#がつくことがあります。

 

既成の曲のコードがどうなっているのかを見てください。

「戦争を知らない子供たち」

C    Em    F    G7     C   Em     F   G7

戦争を知らずに 僕らは生まれた 戦争を知らずに 僕らは育った

   C    Am  F    G7   C   Am F       G7

大人に なって 歩き始める 平和の 歌を 口ずさみながら

C    Em   F    G7  C    Em      F G7 C

僕らの名前を 覚えて欲しい 戦争を知らない 子供たちさ

 

二つのコードの選択

明るい曲ならCかG。どちらを使うかは、歌の音程で決まります。

カポを使わずにCで弾いて歌い、歌いやすい高さにカポを合わせます。

Cで5カポくらいまで上げてぴったりこなければ、

カポなしでGのコードで弾いて歌い、歌に合うカポの場所を探します。

 

右手の話

右手の弾き方は大きく2つに分けられます。

ストローク(弾き下ろし、かきあげ)と

アルペジオ(弦を1本ずつ爪弾く)

 

ストロークには、パターンが色々あって、 

曲のリズム

4拍子なら

 

6/8拍子なら

 

3拍子なら

 

アルペジオにもパターンが色々あります。

4拍子なら

この他にスリーフィンガーの弾き方もありますが、ここでは省略。

 

6/8拍子なら

 

3拍子なら

 

曲全体の中で、最初は静かにアルペジオ、サビの部分からストローク、という

組み合わせもできます。

 

ギター伴奏を適当に弾くためには、

色々な曲のコード進行を体験する必要があります。

沢山の曲の伴奏を弾いていると、この流れだと次のコードはこれ、

というパターンがわかってきます。

 

3−2)ギター伴奏のまとめ

詩を見ながら、明るい曲か暗い曲かを選択

明るい→Cで始めるか、Gで始めるか

暗い→Amで始めるか、Emで始めるか

 

何拍子の曲か

 

弾き方を選択

ストロークかアルペジオか

 

適当に弾く例

 

3−3)歌のメロディー

鼻歌

伴奏に合わせて鼻歌で詩を歌ってみる。

伴奏の音の中で、歌のメロディーが合う部分を探す。

伴奏は和音なので、Cならドミソの音、Amならラミドの音が伴奏ででている。

その3つの音の中で、歌の音を見つけて鼻歌で歌う訳ですが、

特別に「ドミソだ」「ラミドだ」と意識しなくても構いません。

 

歌の音をギターの音の中から見つける。

ギターのコードを歌の音の中から見つける。

 

この両方の作業で曲作りが進行します。

伴奏に合った歌の音を見つける、と口では言っても

具体的に説明のしようがありません。

これは、聞いてみて、違和感があるかないか、でわかります。

録音して自分の歌と伴奏を自分で聞いて、合っていればOK。

他人に聞いてもらって合っていればOK。

これは繰り返して覚えるしかありません。

何回か繰り返しやってみて、いい感じのパターンの部分を覚えて、

全体の流れをつかむ。

 

録音

テープやMDに録音する。

繰り返し聞いて覚える。

本番録音をする。

 

4.私の録音方法の実際

詩を見ながらギター伴奏ができて鼻歌ができたら、

忘れない内に身近に置いてある、小さいラジカセの内臓マイクでテープに録音。

音のメモみたいなものを残す。

この段階で止まっている曲もあるし、この録音から発展させる場合もある。

メモ録音で歌とギターを覚えて、全体を聞いてみてOKなら、

ダブルラジカセにマイクをつけて、

ギター伴奏を弾きながら歌ってテープ録音。(ボーカルとサイドギター)

テープを再生しながら、もうひとつのカラのテープにダビング。

マイクから重ね録音でリードギターや歌のハモリ、コーラスを入れる。

完成品は、歌、コーラス、サイドギター、リードギターなどの音になる。

 

これをCDに入れるには、ウインドウズパソコンに標準装備されている、

サウンドレコーダーを使用。

ラジカセのヘッドホンジャックとパソコンのマイクジャックをつなぐコードを使用して、

テープの音をサウンドレコーダーで録音。

できあがったファイルを保存。このファイルの形式はwav(ワブ)ファイル。

そのままCDに移動して焼き付ければ音楽CDの出来上がり。

 

wavファイルはデータ量が大きいので音がリアル。

しかし、ホームページ(HP)やメールなど、

netで使用するには、ファイルが小さい方がやりとりが楽。

そこで、wavファイルをmp3ファイルに変換するソフトを使用。

その辺の操作の詳細は音ファイルの作り方を参照。

 

例題

ここまでの解説を踏まえて、実際の例を挙げます。

気だるい昼間の 暑さも一息  夏の夕暮れ 蝉時雨

この詩に鼻歌でメロディーをつけます。

使用するギターコード進行は、前述のもの。

弾き方1:ストローク

鼻歌の例 ストローク

 

弾き方2:アルペジオ

鼻歌の例 アルペジオ(イントロ Cを4拍×2回 から始まります)

 

5.曲の構成の基本

曲の構成はどうなっているのか、という基本について説明します。

 

5−1)メロディー進行

曲には、始まりがあり、変調があり、終結するのが一般的です。

童謡のチューリップを例にとると、  

さいた〜、さいた〜、チューリップの、はなが〜

な〜らんだ〜、な〜らんだ〜、あかしろ、きいろ

どのはなみても〜、きれいだな〜

 以上のように、同色の部分は、同じメロディーで進行します。

が〜、の部分は、さいた〜、からを繰り返すための部分。

きいろ、はこのパターンの終わりと変調へ移行する部分、

最後の、な〜、は さいた〜、の 、の音の高さと同じ。  

 

こうして、まとまりのあるメロディーが出来上がっています。

難しいことは何もなく、理屈抜きに、自然に入ってくるメロディーは、

どれもこうしたパターンを持っています。 作文の起承転結と同じようなものです。

 

前述の「戦争を知らない子供たち」の進行パターンは以下。

「戦争を知らない子供たち」

C    Em    F    G7     C   Em     F   G7

戦争を知らずに 僕らは生まれた 戦争を知らずに 僕らは育った

   C    Am  F    G7   C   Am F       G7

大人に なって 歩き始める 平和の 歌を 口ずさみながら

C    Em   F    G7  C    Em      F G7 C

僕らの名前を 覚えて欲しい 戦争を知らない 子供たちさ

 

5−2)伴奏

伴奏はメロディーに合わせて進行します。

メロディーの中の音のひとつを含んで、それにピッタリする和音の組み合わせで、

伴奏が出来上がります。 チューリップの最初の「さいた〜」は「ドレミ〜」です。

これに合う伴奏の和音は、Cの「ドミソ」の音。  

 

5−3)リズム

メロディーと伴奏ができあがって、それでいいか、というと、

もうひとつ「リズム」があります。

 

手拍子で、パン、パン、パン、パン と4つ叩く。

この4つでひとまとまりを4拍子の曲。これが3つだと3拍子の曲。

普通は、4拍子で始まったら、全て4拍子で進行します。

4拍子の次に3拍子がきて、次に5拍子がくる、ということはありません。

リズムが一定であれば、進行が予測できるので、受け入れやすく、

覚えやすく、聞いていて安心します。  

 

聞く側の人が音符を読めなくても、

以上の5−1)〜3)が守られて作られた曲であれば、覚えやすく、歌いやすい。

逆にいうと、この3つは曲にとって、最低限必要な条件です。  

 

6.耳で聞いた歌のコードを探す

私は高校生の頃にギターを始めました。

手当たり次第に気に入った曲を弾いて歌っていました。

歌謡曲からフォーク、ロック、演歌・・・ジャンルは問いません。

演奏したい歌の歌詞とギターコードは、

雑誌の平凡や明星に付録でついていた歌本を見ていました。

友達の歌の本を借りて書き写したこともあります。

 

左手のギターコードと、右手の弾き方の色々を覚え、ある程度やっていると、

その歌を知っていれば、ギターコードと歌詞を見ただけで弾いて歌えるようになる。

イントロや間奏の部分のコードが書いてない場合は困る。

けれど、やっている内に、イントロ・間奏は歌の一部と同じコード進行だ、

とわかってくる。

一曲全部を通してできるようになる。

 

この段階を過ぎると、歌がわかればギターコードを探せるようになる。

ラジオやテレビから流れる歌をカセットテープに録音し、

繰り返し流して歌詞を書き取る。

また繰り返し流して、歌を覚え、ギターのコードを探してメモする。

こうしてギター進行のパターンの色々を覚える。

 

この段階になると、耳で聞いた歌にギターを合わせることができるので、

詩を見ながら鼻歌で歌って、適当にギターを進行させることができる。

これが作曲の始まりでした。

 

7.原曲と編曲

歌のメロディーとギターの伴奏ができて、録音する。

これは原曲です。

このままでもちろん完成品とすることができます。

歌と伴奏だけ、というのはシンプルで、なかなか味があります。

これにアレンジ(編曲)を加えると、色々な遊びができます。

リードギターやピアノなどで、イントロ・間奏・エンディングの部分を加えたり、

ボーカルにコーラスを加えたり、リズムやスピードを変えたり。

こうして、原曲は色々な音を持ち、より深みのある曲になります。

原曲だけでシンプルな構成が合っている曲もあれば、

編曲して色々加えた方がいい曲もあります。

それはその曲のイメージですから、歌う人や演奏する人のセンスで変化します。

 

終わりに

ギター初心者から、「曲の作り方を教えて欲しい」と言われたのがきっかけで、

このページをまとめ始めました。

初心者用には、本当はもっと色々な説明が必要な気がしますが、

実際にやってみて繰り返すことが、理解への早道でもあります。

まずはここで一区切りとします。続編は未定です。

 

追記:

耳で聞いた歌のギターコードと弾き方がわかると、

例えば、テレビで昔のフォークをやっているのを見たとき、

ギターを手にして、何も見ないで一緒に弾けるようになる。

こうなると、普通に歌を聞けなくなる。

スーパーでおかずの買い物をしている時、

店内に流れる最近の曲が耳から入ってくる。

すると、その曲の各音を分解して、

ギターの弾き方はこうやってる、ピアノはこう弾いてる、

ベースギターはこうやってる、ドラムは・・・。

ストレートに曲を聞くことができなくなる。

 

H16.7.4

 

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